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「殺人通貨」の本領発揮【フィスコ・コラム】  4月05日09時00分

新型コロナウイルスの影響で、相場がセオリー通りに動かないケースが目立ちます。特に値動きが読みづらいのはポンド。被害状況だけでなく金融政策、原油価格の動向などの要因が複雑に絡み合い、さらに想定外の変動が続く可能性もあります。


ポンド・ドルは今年に入り1.30ドルを挟んでもみ合っていましたが、2月下旬から徐々に値幅が上下に振れ始めます。3月に入ると1.32ドルまで上昇した後は下げに転じ、3月下旬にかけて1.14ドルまで下落。2週間程度で実に16%も値下がりしました。足元では下げ幅の半分程度まで戻しているものの、目先はさらに回復へ向かうか、それとももう一度下値を攻めるのか、先読みが困難な状況です。


ポンドの最近の値動きは、やはりイギリスでのコロナに関する政策に連動しています。ウイルス拡散を抑制するため接触などを厳しく管理する「社会距離戦略」のヨーロッパ各国に対し、イギリスは当初、組織的に免疫力を高める「集団免疫」を目指しました。ただ、その後専門家などからの批判を受け、方針を修正。その結果、ロンドンの封鎖が経済活動の縮小につながるとの見方がポンド売りを呼びました。


そこに原油価格の急落が加わり、まとまったポンド売りの引き金になりました。イギリスはかつての原油純輸出国としてのイメージが強く残り、ポンドは今も資源通貨の1つと位置づけられています。実際、北海ブレントの価格をみると、3月には3週間程度で1バレル=50ドル台から一気に半値以下に落ち込む場面もありました。それがウイルス被害によるポンド安の支援材料になったとみられます。


こうしたポンドの激しい下落を食い止め相場を安定させたのは、英中銀による金融政策でした。英中銀は緊急の金融政策委員会(MPC)を3月26日の定例会合に先立ち11日と19日に開催。政策金利の引き下げのほか、資産購入枠上限の大幅引き上げといった緩和措置を加えます。平時だと金融緩和は通貨売りの要因になりますが、各国が大幅な利下げに傾き金利差の相場への影響が薄れてしまいました。


3月下旬からポンドが持ち直す過程で、チャールズ皇太子の感染が伝わった際の反応は限定的でした。一方、ジョンソン首相の陽性反応の報道はポンド売りを誘発しますが、症状が軽微で執務が可能と報じられて再浮上しています。ただ、一般的に政治リーダーが健康面に不安が生じるのは安全保障上の危機であり、本来なら急落のはず。ウイルス蔓延の機に乗じテロも起こりえるためです。


首相の感染でもポンドが一時的な下げにとどまったのは、原油安の一服や緩和的な金融政策で回復に向かっていたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)の無制限量的緩和などの措置でドルの流動性を確保したことも寄与しました。それでも、こうしたウイルス蔓延など環境の変化により、ポンドはなお上下どちらに振れてもおかしくありません。値動きが激しく時に大損をもたらす「殺人通貨」の異名を持つぐらいですから。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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