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明日の株式相場戦略=ポスト・アベノミクス相場の入口  8月31日17時37分

 政治には上り坂と下り坂ともうひとつ「まさか」があるというのは、思い起こせば郵政民営化のレガシーを残した小泉純一郎元首相の当時の語録にも刻まれている。振り返って前週末28日、後場の日経平均は安倍晋三首相の電撃辞任の報道を受け、午後2時7分からの数分間で700円強のフリーフォールに直面、まさしく“魔の坂”を転げ落ちるような急落をみた。その直前まで、安倍首相の記者会見リスクにはそ知らぬふりで堅調な値動きを示していた日経平均だったが、秒単位で売り一辺倒の急降下となり、これには慌てた向きも多かったのではないか。アルゴリズムの売りプログラムが作動したことが背景にあるが、考えてみれば情報開示のタイミングとしては、28日金曜日の午後2時というのは株式市場にとって最善だったと思われる。政府が株式市場に配慮がないという声も一部にあったようだが、それは逆であろう。

 もしこの報道が大引け後であれば、欧米株式市場にショック安の波が及ぶ。週明け31日の東京株式市場は、風景がまるっきり違うものとなった可能性が高い。前週末の後場終盤、残り1時間弱という凝縮された舞台で、アルゴ売りがガス抜きの役割を果たし、売り一巡後の政策買いでショートカバーを誘発、結果300円強の下げにとどめた。そして週末から2日間のインターバルを挟めたことで、状況把握の猶予を与え相場にはプラス方向に働いた。

 安倍首相の退陣が決まった時点で、今回の自民党総裁選は最初から選択肢が限られているような部分がなきにしもあらずだ。来年10月に衆院議員任期満了を控えている。コロナ禍での解散総選挙は難しいにせよ、いずれにしても選挙は近い。となれば政治のパワーバランスだけに気を取られ、国民の支持を剥落させてはならない。そして安倍首相が築いたトランプ大統領との強力な信頼関係、これを失うようなことがあっても国益に反する。前週27日の当欄で触れたが、万が一の場合、ポスト安倍はショートリリーフで麻生副総理・財務相もしくは菅官房長官のいずれかの可能性が高いと考えていた。おそらく安倍首相は会見前の麻生副総理との会談で、首相の引き継ぎを要請したと思われるが、麻生氏がそれを断った時点で、菅官房長官の総裁選勝利とまでは言わないが、担ぎ上げが濃厚となった。

 「今回の総裁選は二階幹事長のポジション(処遇)も絡み麻生VS二階の構図が浮き彫りとなるようなイメージがあった」(国内投資顧問)という声がある。となれば、本命菅・対抗河野という戦いで盛り上がるかと思われたが、この土日の2日間を経て“継続性で菅氏が妥当”という空気が既に大勢を占めている。とにかく目まぐるしいが、レールで引かれたようにコンセンサスが形成され、その延長線上には菅氏が新総裁としてショートリリーフを担い、後継が河野防衛相というラインすら見え隠れする。

 きょうで8月相場も終わりとなる。8月は過去10年間の月足が3勝7敗という弱い月にもかかわらず、今回は閑散に売りなしを地で行く強調相場が繰り広げられた。また、きょうはバフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが三菱商事<8058.T>など総合商社大手5社の5%超の株主として浮上し、今後も買い増す可能性があると発表したことを受け5社の株価が一斉高。一方、KDDI<9433.T>、NTTドコモ<9437.T>、NTT<9432.T>、ソフトバンク<9434.T>など通信株が軒並み逆行安となったが、こちらは以前に携帯電話料金の大幅な引き下げ余地に言及していた“菅自民党総裁”の可能性を意識したもの。アベノミクス相場は8月とともに去りぬ、しかしポスト・アベノミクス相場は既に始まっている。 

 個別株では前週取り上げたミナトホールディングス<6862.T>が満を持してストップ高となったが、どちらかというと稀有なパターンであり、今は材料株の高値に食らいついても上ヒゲをつけやすく良い結果が出にくい。強い株も“押し目につく”という基本方針で無理をしないことが肝要。目先はサイバネットシステム<4312.T>、タカショー<7590.T>、日本製麻<3306.T>、FRONTEO<2158.T>、フリービット<3843.T>あたりに目を配っておきたい。

 日程面では、あすは7月の完全失業率・有効求人倍率、4~6月期の法人企業統計、8月の新車販売台数が開示されるほか、10年国債の入札も予定される。海外では8月の財新中国製造業PMI、7月のユーロ圏失業率が発表。また、米国では8月のISM製造業景況感指数や7月の建設支出などが注目されている。
(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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