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【フィスコ・コラム】国際金融センター構想に追い風  9月20日09時00分

菅義偉新首相が意欲を示す日本の国際金融センター構想について、追い風が吹き始めたかもしれません。香港は「中国化」によるダメージ、シンガポールも将来の路線転換が予想されるなか、菅政権の舵取りによっては日本が金融大国化する可能性が出てきました。


安倍晋三前首相の辞任報道が伝わる数時間前、ブルームバーグはその前日に行ったとする菅氏とのインタビュー記事を配信しています。それによると、アジアにおける国際金融拠点の構想を「実現したい」と明言。すでにその後の自民党総裁選での勝利にメドをつけていた時期でもあり、事実上の公約と受け取れます。ただ、どの都市になるかは「こだわらない」とし、大阪や福岡が候補地として浮上しています。


国際金融センター構想の議論がにわかに高まっているのは、今年5月の全人代で香港への統制を強化する「香港国家安全法」が導入されたことが背景にあります。それを受け、早期の中国化は避けられないとの見方が強まり、株価指数などに影響が表れました。香港ドルは対ドルで許容レンジ上限に切り上げられていますが、ドルペッグ制の維持に不安が高まれば逆にレンジ下限に振れる展開が見込まれます。


香港には米系証券など1300社が進出しており、アジアの主要な活動拠点と位置づけられてきました。しかし、香港が金融拠点として君臨する前提である一国二制度を放棄すれば、マネーの流出は避けられないでしょう。世界金融センター指数の調査でニューヨーク、ロンドンについて3位が指定席だった香港は、6位に大きく後退。香港の地位低下は、アジアでのマネー収縮につながりかねません。


香港とともにアジアの拠点となっているシンガポールにも変化の兆しがみられます。7月10日に実施された総選挙で、1965年の独立から一貫して単独政権を担う人民行動党(PAP)が定数93議席中83を獲得。しかし、今回の選挙は、野党の労働者党が議席を4から10へと初めて2ケタ台に伸ばしたことが衝撃を与えました。格差の拡大で1党支配への不満が強まったためだとみられます。


シンガポールの1日当たりの通貨取引量はアジア最大。最近でもUBSやシティなどを誘致しており規模拡大に余念がありません。とはいえ、選挙結果を受け、与党PAPは低所得者や高齢者など社会的弱者に対する一段の配慮を余儀なくされそうです。当面はシンガポールの金融センターとしての地位に変わらないものの、魅力の1つである低税率が将来的に修正されることになれば、それも揺らいでしまいます。


金融センター指数の調査で香港に代わって3位に浮上したのは東京です。他に上海や深センなども上位に浮上していますが、中国政府の統制が嫌気され欧米マネーを集めるのは難しいでしょう。その意味で日本はチャンスといえます。東京都の小池百合子知事は就任以来、外資系の誘致を積極的に進めたほか、国内自治体初の環境債発行などを手掛け、東京の金融拠点化を推進してきました。


ただ、一極集中回避の観点から菅氏の構想の方が好ましいのかもしれませんが、政争の具にされればせっかくの機会を逃してしまいます。さっそく、菅政権の調整能力が問われています。


※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

(吉池 威)



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