株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり(2)【中国問題グローバル研究所】  5月11日15時24分

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、遠藤 誉所長の考察「米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

———

◆米情報機関が新型コロナ「人工的ではない」
4月30日にアメリカの情報機関を統括する国家情報長官室は新型コロナウイルスについて「人工のものでも、遺伝子組み換えされたものでもないという、幅広く科学的に認められている見方に同意する」という声明を出した。発生源については「感染拡大がウイルスに感染した動物との接触から起きたのか、武漢の研究所での事故が原因なのか判断するため、今後も情報を精査していく」としている。

これに関しては日本の多くのメディアが報道しているが、興味のある方は英語の原文情報(※2)をご覧いただきたい。

◆中国の激しい抗議
中国共産党系および中国政府系メディアは、連日、激しい抗議の声を上げ続けている。中央テレビ局CCTVでは毎日トランプとポンペオの発言に関する特集番組を組んで報道しているし、また中国共産党の機関誌「人民日報」は5月1日から毎日連続のシリーズで抗議論評を発表し続けている。

5月1日「第一回」 (※3)
5月2日「第二回」(※4)
5月3日「第三回」(※5)
5月4日「第四回」(※6)
5月5日「第五回」(※7)
5月6日「第六回」(※8)
5月7日「第七回」(※9)
などである。

これを1時間に1回ずつくらい、CCTVで「さあ、仇を取ってやるぞ!」という顔つきと声の張りで「キリッ!」と叫び続ける。

おまけにフランスでの最初の感染者は昨年12月で、この患者にはコロナ流行地域への渡航歴がないことが5月5日にわかった(※10)。

中国の、このニュースへの飛びつきようは尋常ではなく、鬼の首でも取ったような勢いだ。

◆スペイン風邪の発生源は今でも決着していない
1918年1月から1920年12月まで全世界を巻き込んで猛威を振るったスペイン風邪はインフルエンザによるパンデミックで、約5億人(当時の世界人口の4分の1)が感染し、死者数は1,700万人から5000万人との推計が多く、1億人に達した可能性も指摘されている。

その発生源に至っては、アメリカ説が最も多いが、フランス説や中国説などもあり、100年経った今でも、まだ解明されていない。

だからウイルス発生源で勝負しようと思ってはいけない。トランプの大統領再選にも影響するし、アフターコロナの米中パワーバランスにも悪影響を与える。

◆表現を譲歩し始めたトランプ
案の定、トランプは自説である「武漢研究所説」の表現を微妙に変え始めた。

5月5日のニューヨークポストは“Trump blames China for coronavirus spread but says ‘they didn’t do it on purpose’”(トランプはコロナウイルスの蔓延を中国のせいにしているが、「わざとではない」と言っている、※11)というタイトルの報道をしている。トランプは中国攻撃のトーンをすっかり弱めているのだ。

ニューヨークポストのインタビューにトランプは「武漢からウイルスが出たということを明らかにしただけで、研究所を特定しているわけではない」とさえ言っている(Trump clarified that he meant the virus “got out” of Wuhan, not the lab specifically.)。

トランプとポンペオは最初のころは明確に「ウイルスは武漢の研究室(実験室)から出た。それに関するレポートも出す。膨大な証拠がある」と言っていた。ブルームバーグ(※12)やザ・ガーディアン(※13)が伝えている。

◆アフターコロナの米中パワーバランスに影響
またトランプは中国に対する報復措置として、「新しい関税を徴収する」(※14)とも明言している。

ところが次の日になると、大統領副補佐官(安全保障担当)のMatthew Pottingerが「アメリカは報復措置を求めていない。あくまでも中国に第一段階の貿易協議を遵守させるのが目的だ」(※15)と言い出している。

アメリカ統合参謀本部長Mark Milleyも「コロナウイルスは人工的ではない」(※16)と発言。Matthew Pottingerはかなりの対中鷹派なので、ホワイトハウス全体が口裏を合わせてトーンを変え始めたという印象を与える。

5月7日になるとCNNが<コロナ発生源、武漢研究所の「確信ない」 ポンペオ米国務長官>(※17)と伝えた。

こうなると「譲歩の連続」であり、ウイルス発生源論争に関するアメリカの敗北を招く。

これを最も恐れていたので、トランプ政権のウイルス発生源「武漢研究所説」に関しては動静を静かに見守りながら、筆者自身の発信は控えていた。

しかし事態は「愉快でない方向」に動き始めた。

これはアフターコロナの米中パワーバランスを決める大きな要因の一つになるので、確かでない噂に乗っかって煽らないようにしなければならないだろう。さもないと、中国に有利に働く危険性を孕んでいる。

トランプが言う通り、責任は習近平にある。その線は譲ってはならない。
(本論はYahooニュース個人からの転載である)


写真:AP/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://www.dni.gov/index.php/newsroom/press-releases/item/2112-intelligence-community-statement-on-origins-of-covid-19
※3:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/01/nw.D110000renmrb_20200501_2-03.htm
※4:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/02/nw.D110000renmrb_20200502_2-03.htm
※5:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/03/nw.D110000renmrb_20200503_2-03.htm
※6:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/04/nw.D110000renmrb_20200504_2-03.htm
※7:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/05/nw.D110000renmrb_20200505_2-03.htm
※8:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/06/nw.D110000renmrb_20200506_2-03.htm
※9:http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2020-05/07/nw.D110000renmrb_20200507_2-03.htm
※10:https://www.bbc.com/japanese/52540995
※11:https://nypost.com/2020/05/05/trump-blames-china-for-coronavirus-spread/
※12:https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-05-03/pompeo-says-enormous-evidence-links-virus-to-wuhan-laboratory
※13:https://www.theguardian.com/world/2020/may/03/mike-pompeo-donald-trump-coronavirus-chinese-laboratory
※14:https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-usa-china/trump-threatens-new-tariffs-on-china-in-retaliation-for-coronavirus-idUSKBN22C3DS
※15:https://www.politico.com/news/2020/05/04/deputy-national-security-adviser-says-us-not-considering-punitive-measures-against-china-233904
※16:https://www.aa.com.tr/en/asia-pacific/us-military-chief-covid-19-natural-and-not-man-made/1830458
※17:https://www.cnn.co.jp/usa/35153387.html



<SI>

 Copyright(c) FISCO Ltd. All rights reserved.

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »