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新型コロナワクチン開発の現状、日本への早期の必要数供給は期待薄  5月21日10時39分

世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長が「利用可能なワクチン誕生には少なくとも1年から1年半を要するとの見通し」を示す一方で(定例会見3月27日)、アメリカのトランプ大統領は、ワクチンの早期開発・供給を目指して、「ワープスピード作戦により年内にワクチンの供給を開始したい」と表明した(記者会見5月15日)。今、世界では中国、イギリス、アメリカを中心に熾烈なワクチン開発競争が繰り広げられている。

中国のカンシノ・バイオロジクス社と軍事科学院軍事医学研究所のチームが、新型コロナウイルスのワクチン候補として、世界で初めて、3段階ある臨床試験のうち第2段階に入ったと報じられた(新華社4月12日)。

一方、イギリス・オックスフォード大学のジェンナー研究所は、5月末までに6,000人以上を対象にした新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を行い、安全性と有効性を実証すると発表した(ニューヨークタイムズ5月2日)。

さらに、5月18日、米バイオテクノロジー会社のモデルナ社が、「開発中のワクチン候補が、臨床試験第1段階において有力な初期兆候を示した」と発表した。モデルナ社によると、45人の治験者を対象に、ワクチン量に応じて3つのグループに分けて効果を検証し、現時点で8人から感染予防の働きをする「中和抗体」が確認されたと発表した
(ブルームバーグ5月19日)。

この他にも「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」、「米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)」、「米国生物医学先端研究開発局(BARDA)」などの政府系機関から数百億円~1,000億円の資金拠出を得て、米企業はじめ独仏企業数社が年間数10億本の生産を目指した研究開発に臨んでいる。

一方、我が国でも、塩野義製薬のグループ会社のUMNファーマが、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援する「新型コロナウイルスワクチン開発に関する研究」に2020年3月から参画し、組換えタンパク抗原の作製を進め、1,000万人規模のワクチン提供を目指すと発表した(同社発表4月27日)。また、田辺三菱製薬は、連結子会社であるタカラバイオ<4974>とワクチンの共同開発を決定し、新型コロナウイルスに対応した植物由来ウイルス様粒子(VLP)の作成に成功し、8月以降の臨床試験開始を目指している(同社発表4月28日)。さらに、大阪大学と創薬ベンチャーのアンジェス<4563>によるDNAワクチンの開発が注目されている。7月には大阪府・大阪市の支援を得て治験を開始し、9月ごろにも実用化、医療従事者などに優先的に投与すると表明している(化学工業日報5月17日)。

海外での開発状況にもよるが、我が国の感染者、死亡者数の現状及び外交交渉力からして、感染者数、死亡者数が相対的に多い国が、我が国に十分な必要数のワクチンを早期に供給してくれることは期待できないだろう。我が国における研究開発に際しては、予算規模が小さく、生産ラインが十分に揃っている環境ではないので、所要量の生産や供給には長期間を要する可能性が大きい。例えば、前出の3社が年間1,000万本生産できるようになったとしても、全国民に供給されるのに4年かかることになる。

各国首脳は、「ワクチンは人類の共有財だ」と発言するが、一方で、「ワクチンの保有は自国民を守る安全保障戦略である(ドイツ・アルトマイヤー経済相)」と公言する国家もあることから、我が国としては、多少コストや時間がかかったとしても、今次コロナ禍の教訓から衛生用品同様、ワクチンは戦略物資と捉えて国内生産体制を構築などの選択肢を検討する局面にあるのだろう。


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