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新型コロナと米大統領選(2) 10月16日16時23分

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイー氏の考察「新型コロナと米大統領選(1)」の続きである。

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◆「中国の疫病」と中華帝国
もっとも中国共産党は、習近平体制の前からもう何年にもわたって慎重さを捨て、アジアにおいて中国帝国の再建を目指し、また世界でも従来より遠慮なくとそれを実現しようとしている。国内では、党は生活のあらゆる領域に手を伸ばしている。国内経済のすべての戦略部門では国家による統制が引き続き最優先され、中国の大手民間企業には党の細胞組織を置くことが求められる。企業は民間の所有かもしれないが、党の意向から独立しているとは決してみなされない。フィナンシャル・タイムズ紙はこのほど、中国共産党の統一戦線工作において民間企業が果たすべき重要な役割に関する一連の政策発表について報じた。統一戦線は、外国の社会やビジネスのあらゆる面で、党の方針を調整し推進する党直轄のプログラムである。中国の民間企業は、商品やサービスを海外で売るだけでなく、中国の方針を積極的に推進し支援することが期待されている。少し例を挙げれば、反法輪功や、反ダライ・ラマ、反香港抗議運動などもそうだ。統一戦線工作は政治家に対し、人権問題から中国の投資の役割に至るまで中国寄りの姿勢を取るよう働き掛けることを意味する。これは中国の成長と発展を注視してきた人たちにとっては新しいことでも驚くことでもない。ニュージーランドのアンマリー・ブレーディー博士は、ニュージーランドおよび世界各地における中国の影響について最前線で研究、執筆してきた。クライブ・ハミルトン氏とマライク・オールバーグ氏は共著「Hidden Hand:Exposing How the Chinnese Communist Party Is Reshaping the World(隠された手:中国共産党による世界再構築の画策を暴く)」 で欧州での中国の影響力行使を詳述しており、最近では徐斯儉氏とJ・マイケル・コール氏が、中国の行動によって世界の民主主義が蝕まれている実態に関する一連の論評を「Insidious Power(狡猾な力)」という書籍に編集している。

10月1日は中華人民共和国の建国71周年だった。ロンドンではこの日、少数のデモ隊が中国大使館の外に集まり、香港での弾圧に抗議した。スローガンを叫び、歌い、中国国旗を焼き、また建物の周りの手すりを小さな音を立てて叩く人もいた。これに対し大使館は声明を発表、その一部はすべて引用する価値があるので次に示す。

彼らの行動は、国家の威厳に対する重大な冒涜、かつ「中華人民共和国国旗法」 および「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法」に対する違反に相当し、中国の主権と領土保全への挑戦かつ中国大使館の施設およびスタッフの保安と安全に対する脅威である!

歌ったり、国旗を燃やしたりすることが国の威厳の重大な冒涜に当たるどうかは別として、上記の2つの法律は英国だけでなく中国領土以外では全く効力を持たない。デービッド・キャメロン首相時代に喧伝された英国と中国の「黄金時代」に、英国の主権が中国に移譲されたわけではない。問題とされた行為は、他人に危害を加える明らかな脅威がある特定の状況でない限り、英国の法律の下では犯罪には当たらない。ロンドンを訪れた人なら誰でも、官庁街のホワイトホール周辺で毎日のように同様の抗議行動を目にするだろう。しかし、極度に敏感な中国という国家は、どんな些細なことであっても彼らのルールに対する抗議は処罰されなければならないのだ。これは、弱々しい心配性の偏執的リーダーシップを示すものであって、世界の舞台でその役割を果たすことに自信を持つ国の姿ではない。香港には、「国家安全法」の実態は「国家不安法」だというジョークがある。中国が国内外からのあらゆる批判に文字通りおびえているからだという。

これが現代世界の中国の現実だ。しかし、中国人は誰もがスパイであって遠ざけたり標的にしたりすべきだという意味ではなく、中国とのビジネスや貿易ができないという意味でもない。また、中国との協力が不可欠な分野がないという意味でもない。気候変動問題などがその例だ。トランプ氏は、中国の行動や行き過ぎを 「発見」 したり 「暴露」 したりしたわけではないが、中国について議論する際に批判的なトーン、時には非常に批判的なトーンを使い、これらの問題を世界の政治的議論の中心に据えることができる状況をつくりだした。

このようなことからみれば、ホワイトハウスの指導者がたとえ交代したとしても、それに伴って「通常に戻る」というアプローチは考えられまい。 バイデン氏がトランプ氏の路線を継続するのはほぼ間違いない。ただしトランプ氏のように破滅的で、同盟の構築に逆行し、その関係を疎外するような方法は取らないだろう。ロンドンの中国大使館の発表は、中国はどんな場合でも批判や非難の対象にすべきではないという中国政府の立場を示している。どのような状況であれ、中国に関係するあらゆる問題について自分たちが普遍的な管轄権を行使し、規則を決められるという期待を持っているようだ。

◆長い1ヵ月の先
トランプ氏の新型コロナ感染は、大統領選直前の10月に起きるオクトーバー・サプライズと呼ばれているが、一世代ぶりの重要性を持つ今回の米大統領選挙で最後の1ヵ月で他に何が起こるかは分からない。バイデン氏は世論調査では強いリードを保っているものの、確かなことは何一つない。2020年はあまりに多くのサプライズがあったので、唯一確実なのは確実性がないということだけだ。トランプ氏が2期目の政権を担えば、中国に対してより強硬な姿勢を取るだろうが、政策に対する場当たり的なアプローチは変えられないだろう。バイデン氏が政権を取った場合でも中国に対する圧力は維持するだろうが、敗北したトランプ氏からの連日にわたる批判の舌鋒に打ち勝たなければならないだろう。トランプ氏は、日々の問題への口出しを遠慮せず、自分だったらはるかに上手くやれたと言うはずだ。米国の国内政治は非常に党派色の強い局面が続くと予想される。

新型コロナの感染は米国の最高権力者まで到達したが、米国政治にとって中国問題は今後何年も続く。世界の志を同じくする国々が中国への対応を調整するためには、米国のリーダーシップが不可欠である。中国は自らの意図と自らが支配を望む世界について非常に明確にしているが、自由世界も同様に自分たちはそれに付き合うつもりがないことを明確にすべきである。

写真:AP/アフロ

※1:https://grici.or.jp/



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