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信託報酬の一部が現金で返ってくる!
松井証券の「投信毎月現金還元サービス」

金融最前線

 

 松井証券は2020年4月1日から「投信毎月現金還元サービス」を始めました。文字通り、同社が取り扱っているすべての投資信託(以下「投信」という)を対象に、信託報酬の一部を投資家に現金で還元するものです。同様のサービスをポイント還元で実施しているネット証券はありますが、現金を還元するのは同社が日本で初めて(*1)。その概要を解説します。

(*1) 2020年3月27日時点、松井証券調べ。預かり資産残高の条件があるサービスやキャンペーンを除く。

販売会社の信託報酬、0.3%上限に残りを還元

 松井証券の「投信毎月現金還元サービス」とは、同社が受け取る投信の信託報酬の一部を投資家に現金で還元するもの。「一部」とは、0.3%(税抜)を上回る部分を指します。

 一般に投信の信託報酬と呼ばれるコストは、目論見書には運用管理費用などと記載されています。投信の運用会社だけが受けとると思われがちですが、そうではありません。投信運用の「委託会社(運用会社)」と販売した「販売会社(証券会社や銀行など)」、資産を保管・管理する「受託会社(信託銀行)」の3者で分け合う形になっています。その配分はおおむね、運用会社が半分弱、販売会社が半分強、信託銀行が残りのようなイメージ。個々の投信によって、配分は違ってきます。

 たとえば、国内で純資産総額が最も大きい「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」。この投信の信託報酬は1.1%(税抜)で、そのうち販売会社が受け取る分は0.7%(同)。運用会社は0.35%(同)、信託銀行が0.05%(同)となっています。割合としては、おおよそ64:32:4になります。

 これが「投信毎月現金還元サービス」では、販売会社分の0.7%のうち0.3%を残した0.4%分を受益者に還元します。「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」を月間平均で3,000万円保有したと仮定すると、月ごとの還元額は1万円、1年間で12万円になります(*2)。なかなかの還元額といえるのではないでしょうか。

(*2)毎月の還元額=月間平均保有金額×還元率(松井証券が受け取る信託報酬の0.3%を超える分)÷12(か月)


【ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の信託報酬の内訳と還元例】

【ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の信託報酬の内訳と還元例】

※投資信託の基準価額の変動や信託報酬の変更があった場合、それに合わせて還元金額も上下します。


移し替えも実質無料で可能、分配金も満額で受け取れる

 このサービスの大きな特徴は、(1)対象の投信を保有しているだけで、現金を毎月受け取ることができる。(2)他社から移し替えた投信も還元の対象になる。(3)信託報酬の一部を還元するため、運用成績には影響しない――の3点を挙げることができます。

(1)対象の投信を保有しているだけで、現金を毎月受け取ることができる

 対象となる投信は、販売会社が受け取る信託報酬が0.3%(税抜)を上回るもので、「当社が取扱う1,254本のうち7割超となる915本が該当します(*3) 」(松井証券)。同社で投信を保有しているすべての投資家が対象となり、手続きは不要です(還元額は平均保有金額の変動によって変わってきます)。
(*3)2020年5月1日時点。ETF、米ドルMMF、iDeCoで保有している投資信託は対象外。

 (2)他社から移し替えた投信も還元の対象になる

「投信毎月現金還元サービス」の条件は、松井証券で対象投信を保有していることだけ。他の証券会社や銀行などから移し替えた投信も還元の対象になります。投信を移し替える場合には、それまで保有していた他社で手数料が発生することが多いですが、同社はこの費用を全額負担する「移管手数料負担サービス」を用意しています。つまり、他社で購入した投信も、結果として追加費用なしで現金還元の対象とできるわけです。

 (3)運用成績には影響しない、分配金は満額受領できる

このサービスで還元する現金の原資は、同社が受け取る分の信託報酬です。どの証券会社や銀行で保有していても、同じ投信なら同じ額が経費として基準価額から差し引かれています。投資家からの信託財産には一切手を付けないため、運用成績には影響しません。当然のことながら分配金も、これまで通り満額を受け取ることができます。


信託報酬率の改変が難しいなかで検討したいサービス

 「現金還元なんて面倒なことをせずに、証券会社の信託報酬率を下げればいいのでは?」と思うかもしれませんが、これがそう簡単ではありません。投信のもうひとつの主なコストである購入時(販売)手数料は、「購⼊価額に○%以内で販売会社が独⾃に定める率を乗じて得た額」など、それぞれの販売会社が決めることができます。一方の信託報酬は、目論見書に報酬率が明確に記載されています。つまり、投信そのものの基本として販売会社が改変し難い構造になっているのです。

 リスクがリターンの源泉であることはご存知の通りです。将来のリスクを正確に予測することは誰もできません。しかし、将来のリターンに大きな影響を及ぼす販売手数料や信託報酬などのコストは明確にわかります。投信のコストをできる限り低減することは、合理的な投資哲学ということができます。

 投信の販売手数料は無料化(ノーロード化)が進むなど低減されつつあり、松井証券でも2019年12月から、すべての取扱い投信の販売手数料を無料化しています。信託報酬は投資家が投信を保有している間、ずっと負担しなければならないコスト。これが現金の形で還元されるのは投資家にとってうれしいポイントでしょう。手続きが不要で他社からの移管コストも松井証券が負担してくれるとなると、ぜひ検討してみたいサービスといえるのではないでしょうか。



掲載日:2020年5月22日



   
    

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